あやアフター
〜 unofficial but reasonable story 〜
※リトバスEX考察・解説記事を全て読んでからお読みください。
新緑の香りが鼻の奥を刺激する。
しかし、男の顔は沈んでいた。
—
男は医者だった。
ただの医者ではない。
戦地におもむき、傷ついた兵士や民間人を治療する。
何十年も、男は自らを犠牲にし、人々の治療に当たってきた。
寄り添う妻はいなかった。
戦地で亡くしたのか、男についていけなくなったのか。
寂しいと思うときもあった。
それでも目の前に広がる悲惨な現実が、男を突き動かし続けた。
男には一人の娘がいた。
苦しいときも、辛いときも、男にとって娘は大きな存在だった。
泣き言もいわず、身勝手な父についてきてくれた娘に
男は言いようのない感謝の念を感じていた。
そんな男にも転機が訪れた。
恩師からの手紙である。
手紙にしたがい、十数年ぶりに帰った母国は冬だった。
新しい生活が始まる期待に、男も娘も胸を躍らせていた。
—
白い部屋にはベッドが1つとイスが1つ。
窓からさわやかな風が流れ込む。
しかし、男には、
すがすがしいはずの初夏の風さえけだるく感じられた。
もう何ヶ月経つだろうか。
ベッドには女の子が一人。
たくさんの管につながれて、目をつむったまま眠っている。
一見すると死んでいるのではないかと思うほど、その顔は安らかだ。
ただ、かすかな呼吸の音が、生の存在を教えてくれていた。
「緊急を要する状態でしたが、命には別状はないはずです。
応急処置が適切だったのが功を奏しました。
ただ、なぜ意識が戻らないのかについては何とも・・・」
・・・担当医の言葉は歯切れが悪かった。
—
ひどい事故だった。
突然の土砂崩れで、何人もの作業員が亡くなった。
作業員の健康管理に当たっていた男も、
あやうく土砂崩れに巻き込まれそうになりながら
すんでのところで助かったのだった。
—
人が死ぬのは嫌というほど目にしてきた。
大人も子供も、女性も男性も、銃弾の一発で死んでいく様を目にしてきた。
そのたびに何もできない自分の不甲斐なさを感じていた。
同時に、ほんの少しずつ、他人の死に慣れていく自分が怖かった。
けれども、それはやはり他人だったのだ。
家族じゃない。
他人の死だったからこそ、男は冷静でいられた。
どんな人とも分け隔てなく接していたつもりの男は
今さらになって、他人を他人としてしか見ていなかったことに気づかされた。
今、この瞬間も、戦地では多くの人が傷つき倒れているのだろう。
いや、この日本でも、どれだけの人が悩み苦しんでいるか知れない。
それを思えば、自分が立ち上がらねばならないと男は思った。
けれども、体は動かない。
あの事故の瞬間から、男の時間はずっと止まってしまっている。
—
「急患だ!!」
騒がしい声がする。続けて響く、沢山の足音。
急患は珍しいことではない。
ところが今回は1人や2人の急患ではないようだ。
「どうかしたんですか?」
知り合いの看護士を捕まえて聞いてみる。
「何でも修学旅行のバスが崖から転落したそうですよ。
何十人と運び込まれてくるようです」
看護士は言葉少なに言って去って行く。
こんな時でさえ、動かない、動けない自分に苛立った。
苛立ちのためだろうか、隣に眠る少女の顔が、
少しだけ赤らんで見えた気がした。
— —
桜の舞い散る中、あたしはその門をくぐる。
同じ県内の全寮制の学校。
お父さんは
「まだ日本に慣れてないし、体も万全か分からないのに
寮生活なんて大丈夫か?」
と心配してくれたけど、
あたしは無理を通した。
これからは言いたいことも言うし、やりたいこともやる。
やり直したいと思ったって、決して過去には戻れないんだから。
未練も後悔もないように生きると決めたんだから。
・・・薄れゆく記憶をたぐりよせて、やっとこの学校を見つけたんだから。
受験は大変だった。
英語と数学はなんとかなったけど、国語がさっぱり。
何より難しい漢字が読めない。
小学生用の漢字ドリルから勉強するのは屈辱といってもよかった。
それでも、負けないことを誓ったんだ。
いつかのあたしは。
この足は歩き出す。
どんな過酷が待っていても、
胸に強さを、気高き強さを持つことができたから。
—
「ぐおらあーーーっ!
謙吾っーーーー!!」
ところが突然の怒声に、いきなりつまづきそうになる。
「ぬがうっ」
転びかけるすんでのところで、なんとか体制を立て直した。
「やめてよ真人〜!
入学式だっていうのに、新入生が見てるよ〜」
続けて聞こえてくるのは嘆願するような声。
「止めるな理樹。
男と男の争いには、入学式も関係ねえっ!」
「そうだ理樹。
男にはな・・・やらねばならん時があるのだーっ!」
怒声が2つになった。
声の方向を見ると、取っ組み合う大柄の男が2人。
「はあ、やれやれ。
もう3年生だっていうのに、相変わらずだなあ・・・」
ため息をついているのは、線の細い、女の子のような男の子だ。
だけど、その凛とした目が印象的でもあった。
「おっ、やってますな。真人くんも謙吾くんも頑張れ〜」
「頑張るのです〜。わふー」
「ふむ、相変わらず馬鹿2人は騒がしいな」
「いつもの事です」
「まったく変わらん奴らだ。小鞠ちゃん行くぞ」
「あっ、鈴ちゃん待って〜」
「宮沢様・・・新学期から熱血ですわ!」
「まったく、人が新入生の入寮で忙しいってのに・・・あの集団は本当変わらないんだから」
観戦?の声も聞こえてくる。
「あれは・・・なんですか?」
近くにいた人におそるおそる聞いてみる。
「ああ、あれか。
リトルバスターズとかいってね。
この学校の名物みたいなものさ。
「筋肉だるまみたいなのが井ノ原 真人、
道着を着ているのが宮沢 謙吾、
あと、ため息をついているのが直枝 理樹ってリーダーなんだとさ」
「なおえ・・・りき・・・くん」
・・・懐かしい響き。
胸の中がほんわかとするような。
「あっ、君、新入生だろ?
急がないと入学式が始まるぞ」
周りを見回すと、観戦していた人だかりもまばらになっていた。
喧噪が去っていく。
あたしは
いつか誰かが夢見た青春に思いを馳せながら
入学式の会場へと足を進めた。
感動した( ;∀;)
ヤバイッス・・・・
いろいろ素敵すぐるっす!
ありがとう
感動しました!!
リトバスはやっぱいいゲームですね!!
子供だったあやが高校?
十年近く眠っていたのでしょうか……
「子供だった」というのがよく分からなかったのですが、画像から判断されてのことかと思います。
考察3にも引用していますように、あやは
・幼少期に理樹に出会い
・それから十数年ぶりに日本に来た
とありますので、理樹たちとほぼ同年代と考えるのが妥当かと思います。
その点、考察3にも追記しておこうと思います。
ありがとうございます。
十数年ぶりに日本に戻った際、あやは受験する必要があるという表現もあったので高校の編入試験あたりっぽいですね。
あやの事故の場所って修学旅行の事故と同じだったりしないかなーとも思ったのですが、雨降ってたり微妙にシチュエーション違うんですよね。
素晴らしいです!
Saya’s song聞きながら読んでいたら
かなりうるっときちゃいましたね…
アニメ化ということで
3周目プレイ中ですが…やはり沙耶ルート最高です
リトバス最高です
アニメで沙耶ルートは無いみたいですけど…
いいですねッ
実際こんなふうに沙耶アフターがあってほしかった・・
沙那アフター自作ですか?
凄く文章が整ってて読みやすいし面白かったです♪
ありがとうございますm(__)m
感動をありがとう。希望をくれて本当にありがとう。
気が向いたら彼方√の考察もお願いします。
すばらしい。クドのアフターよりも沙耶のアフターの方が欲しかったな…もちろんバス事故が起こった世界での話
この考察が正しいのなら事故にあった時の沙耶の画像は沙耶の中のイメージということですかね
あの画像のおかげで僕も虚構世界参加時の沙耶は子供だと思っていました
すると逆に小さい頃に遊んでいた子は理樹ではなくなってしまうという…
ssの設定だと沙耶は一歳年下なんですかね
後、ssに美魚さんがいませんよ~
たとえば
「ふむ、相変わらず馬鹿2人は騒がしいな」の姉御のセリフの後に
「いつもの事です」
って感じに入れるとか
え、佳奈多と佐々美?
美魚さん、失念していました。全国の美魚ファンの皆様、申し訳ない!!m(__)m
修正入れさせていただきました。ご指摘ありがとうございます。
ささささんとカナタさんについては・・・ま、まぁ、遠くで見守っているということで。
事故画像から、あやの年齢を推測している考察は多いのですが、実は沙耶のビジュアルは「あやが成長した姿」ではありません。
「朱鷺戸沙耶」というキャラクターは、もともと恭介の愛読書「学園革命スクレボ」の登場人物であり、そのビジュアルを引き継いでいるものと考えられます。
本来、あやは虚構世界に招待されていませんから、あやの姿のままで虚構世界に入ることはできません。
そこでNPCとして(なぜか)存在していた「朱鷺戸沙耶」の姿を借りることで、あやは虚構世界に入っています。
NPCとしての「朱鷺戸沙耶」は恭介の茶目っ気で存在していたか、あるいは虚構世界にあやが干渉したことで生み出されたかのどちらかと思われます。
だからこそ、最初のうちは恭介も、あやが「朱鷺戸沙耶」として行動していることに気づくことができなかったのだと考えられます。
なので「朱鷺戸沙耶」のビジュアルと、あやのビジュアルを比べて、あやの年齢をおしはかることはできません。実際のあやは、沙耶のようなグラマラスな体型ではなく、事故画像のような普通の(むしろ、ちょっとがっかりな)体型だったと考えられます。
以上、本当ならばきちんと論拠を示すべきなのですが、簡単に結論だけ書きました。
沙耶の年齢については、ゲーム内で言及されている通り、理樹たちと同年代と考えてよいと思います。(考察3に時系列を書いています)
1歳年下というわけではなく、中学より上の学校(大人の事情でこういう書き方をします)に行ってなかったと思われるので、1年生からやっているという設定です。
私の言葉が足りずに、疑問に思わせてしまい失礼しました。ご指摘ありがとうございました。
その他の人物妄想
佐々美「部員勧誘ーーーー」
三人衆「おーーー」
佳奈多「人が新入生の入寮で忙しいってのにあの集団はああぁぁーー(怒)」
葉瑠佳ぁぁぁ
ワタシナニモシテマセンヨ?( >ヮ<)
あやと沙耶を区別して書くの忘れてました
そんなコメントにどうもありがとうございます
あやがグラマラスでないだと…
ク、クドと同じぐらいだとでもいうのか…
事故時の時だから今より小さいのでは?
事故で意識不明の子供も体は大きくなるって言うし…
虚構世界とあやの事件の時間差は明言されてないし…
久しぶりにCGを見ると…
これは中学より上の学校に就学する少し前の子にはとても見えない気がします…
クドもそうっちゃそうですが…クドより小さくないかな…?
やっぱり私はあのシーンはあやの感覚か想像による今の自分の状況を
表しているのではないかと思います。
後、気付いたことを少々
埋まっているあやと倒れてる沙耶では髪型が少し違います
あやはツインテールで片方ほどけてる
沙耶は少しの髪を羽みたいな髪紐?で両側に、残った髪を後ろで縛っています
恭介はこの髪飾りと髪型であやを朱鷺戸沙耶だと認識していた可能性はあ
無いでしょうか?
あやの実年齢について、本当はちゃんと自分で書くべきなのでしょうが、楽をして参考リンクで済ませてしまいます。お許しくださいませ。
http://blog.livedoor.jp/uru_shirimeturetsu/archives/464674.html
SS、コメントいただいたものを一部使わせていただいて修正しました。セリフだけで誰か(プレイヤーには)分かるようにしたいのと、EX後ということで佳奈多も少しやさしめに。ありがとうございます。
最初読んでて意味がよく分からなかったけど、医者は沙耶の父親って事でいいのかな?
やり方は違ってもはるちんや佳奈多のようにあの世界に終わりをつげたんだから、沙耶もこんなふうになっててもよさそうな感じでしたね。
あ、でも、youtubeにあったリトバスのスクレボENDでは沙耶と恭介が入れ替わってるようなENDだったし、そっちでもよかったのでは?(生意気言ってすみません^^;
後、一応キャラが喋る時に○○(〇はキャラ名)を入れたほうがいいのでは?
失礼ですが原作プレイしましたか?
アニメのリトルバスターズ!Refrainが成功したら、是非沙耶ルートを劇場化もしくはOVA化してほしい。
事故時のあやの画像を見ると左腕と半身が千切れているのかと思ってましたが、この考察を読んでからよく見ると左腕と半身は土に埋もれているだけなんですかね。
そう考えると沙耶生存説が濃厚になってきますね。
この考察を読むまで少し悲しい気分でしたが、おかげで救われました。
ありがとうございます。